ドラマ「ハゲタカ」を見て

ドラマ版「ハゲタカ」を一気に視聴した。計6話、通常の作品よりも話数が少ないものの、内容の密度が濃く、十分な作品展開を楽しむことができた。

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ちなみに小説は2〜3年前?に読んでいる。ハゲタカ1・2、レッドゾーン上下を読破し、グリードもいつか読もうと思っているうちに、ついに読み忘れていたのだった。今回のドラマを機に急に小説が懐かしくなったので、購入してみようと思う。

 

さて、ドラマ版。小説とは登場人物各々のバックグラウンドの違いやストーリー設定こそ違うものの、もう一つのハゲタカとして示唆に富んだ作品に仕上がっている。

 

外資ファンドは投資家が期待する十分なリターンを稼ぐ事が仕事であり、そのためにポテンシャルを持つ赤字の瀕死企業の再生を担う。再生を果たす=企業価値の向上による株価上昇の後、株式売却 or 上場によるキャピタルゲインによって利益を得る仕組みだ。本作はその過程が話のタネなわけであるが、瀕死の企業を再生するという意味において、銀行とハゲタカファンド、何が正しいのか?を問いかける。

 

作品名でもある”ハゲタカ”は獲物を喰う、いわば弱者を食い物にする象徴である一方で、銀行は社会におけるクリーンな存在で安心感を抱かせる存在だ。
前者はリストラも問わず、合理的な再建計画を推し進める。彼らは企業再建のプロだ。後者は銀行という組織の制約のために、外資ほどのドラスティックな戦略を実行提案することはできない。

 

現実を直視しない・またはできない日本企業、そこに関わる銀行の姿勢に対して、真っ向から正視して切り込む鷲津。彼が再建に携わった企業は、当初の計画どおり再び輝きを取り戻してゆく。最初は大きな痛みを伴う外科手術だが、企業が倒産した場合に抱える損失と比較することは出来ない。動ける間に動かなければ、間に合うものも間に合わなくなる、とはまさにこの事を指すのであろう。

 

却って銀行。企業収益の落ち込みによって手元キャッシュが不足すると、債権回収が難しくなってゆくので、貸し渋りを行うようになる。この貸し渋りを上から命令される銀行員、自殺に追い込まれた経営者と残された家族。結局のところ、銀行も営利企業である以上、必ず自行の利益を追求しなければならず、悲劇は生まれる。

 

反射的な現実逃避は問題の先送りにすぎず、本質的な解決策ではない。本作は現実を直視することの重要性を強く訴えている。聞こえのいい言葉に流されるのではなく、どこまでも冷静に、時に冷徹に対峙している者が正しい。